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長年飲食業に携わっているプロの人なら、すぐにも人件費に目がいくのだが、素人はどうしても、このへんの判断が甘くなりがちだ。
1人くらい大差ないだろうと考えるのだろうが、じつはその差が大きいのである。
もちろん、だれだって、わざわざムダとわかっている人を一雇うことはないだろう。
問題は、この厨房の適正人員は何人か、という判断なのだ。
逆にいうと、この規模の店舗なら何人で運営できるか、その最低線をつかまなければならないということになる。
最初に、効率よくつくられた小規模店なら、と断ったのは、そういう意味なのである。
オープンに当たっては、この点についてくれぐれも慎重に判断してほしいと思う。
昔から小規模飲食店が生業なのは、家族労働少人数でやっていける商売だったからだ。
この生業のよさをビジネスとしてとらえ直す発想が大事になる。
以上、個人がもっともオープンしやすい業種としての、ラーメン店の3つのメリットを見てみた。
これらのメリットをどれだけ生かせるかは当然、人によって違ってくる。
よほどバカなお店づくりをしない限り、小資本.少人数.立地を選ばない、というメリットは間違いなく享受することができる。
いいかえれば、それだけハードルが低くなるわけで、成功しやすいということになるのである。
ひと口にラーメンといっても、いろいろなメニューがある。
オリジナル商品を持つお店も多いから、その種類たるや、まさに数え切れないほどである。
逆にいえば、オリジナル商品の開発をしやすいメニューということができる。
また、他店との差別化を図りやすいメニューということでもある。
だから、どの業種業態でも、本当に成功したいと考えているお店では、なんとかオリジナル商品を開発しようと腐心している。
少しでも他店との違いを強調することで競争に勝とうと、大変な努力をしている。
ただ、口でオリジナルというのは簡単だが、業種によっては、実際の開発はなかなか思うようにはいかないこともある。
多少の違いは表現できても、お客をぐいぐい引きつけるパワーを持つには至らないケースも少なくない。
ところが、ラーメン店は違う。
多くのお店が自店だけのオリジナル商品を看板にし、そのパワーで集客しているのである。
まず、この事実を確認しておこう。
ではどうして、ラーメンにはこれほどのメニューバラエティーがあるのだろうか。
他業種では苦労しているオリジナル商品の開発を、いとも簡単に成し遂げている秘密は何なのだろうか。
その秘密はじつは、ラーメンという商品の特性にある。
いや、オリジナル商品という意味合いからは、中華麺といったほうが適切だろう。
そばでもうどんでもなく、スパゲッティーでもない麺類、という意味である。
とにかく中華麺は、じつに商品開発のしやすいメニューなのだ。
中華麺の味は、基本的にはタレ、スープ、麺で決まるが、それらはそれぞれ、次のように大分類される。
まずタレだが、基本の調味料は醤油、塩、味噌である。
スープの主材料は、鶏ガラ、豚骨に分けられる。
麺は細麺、太麺、中太麺、それにちぢれ麺の四種類がある。
中華麺は、これらの大分類だけではとてもくくり切れない広がりを持つメニューである。
次に、それぞれの要素をさらに細かく分類してみよう。
タレの基本調味料は醤油、塩、味噌だが、タレの味はそれだけで出来上がっているわけではない。
たとえば醤油味のタレといっても、お店によってはチャーシュー用の豚肉を漬け込んでうま味を加えたり、ねぎやしょうが、あるいは漢方薬などスパイスの風味を加えていたりする。
味噌にしても同様である。
まず味噌自体にいろいろな種類があるから、そこにさらに風味やうまみ、隠し味をつけ加えれば、オリジナルの味づくりは自在である。
本格的な中華味にするなら、豆板醤(ソラマメからつくる味噌)とか甜麺醤(小麦粉からつくる甘い味噌)とか芝麻醤(ゴマ味噌)といった中国独特の味噌もある。
スープの主材料には、ガラ類だけでなく鶏肉を丸ごと使ったり、鶏の足(モミジ)や豚足、豚肉などを合わせて使うお店が少なくないし、副材料としてはタレと同じように、ねぎ、しょうが、スパイス類などを加えて臭みを取ったり、風味をつけたりする。
これら材料の組み合わせばかりでなく、使用材料の質や量、また煮出し時間などによっても、味はガラリと変わってくる。
麺は形状としては大分類だが、使用材料やつくり方によってそれこそ千差万別といっていい。
小麦粉をはじめとする材料の質や配合割合によって、麺のこしや固さといった食感はかなり違ってくるし、味や香り、色合い、栄養価も違ってくる。
以上は、中華麺の基本についての分類だったが、実際にはこの上にいろいろなトッピングがのることになるから、メニュー.バリエーションはどんどん広がっていく。
さらに、中華麺には独特の地域料理色という特色がある。
たとえば大分類をすれば、中国料理としての麺類と、日本で独自に発展してきた麺類とに分けられる。
中国料理としての麺類はそれこそ数え切れない種類があるといわれているが、ポピュラーなものだけでも軽く10指を数える。
中国料理は日本料理以上に地域色がはっきりしているから、それぞれ強烈な個性を持つ麺ばかりである。
また、台湾や東南アジアの麺類も、これから狙い目のメニューである。
一方、日本で独自に発展してきた中華麺は一般にラーメンと呼ばれる麺類だが、こちらにも強い郷土色がある。
東は札幌ラーメン、山形ラーメン、喜多方ラーメン、東京ラーメン。
西では博多ラーメン、久留米ラーメン、熊本ラーメン、鹿児島ラーメンなど。
よく知られている郷土ラーメンの名前をざっと挙げただけでも、これだけの種類になる。
また、最近復活してきた、支那そばという懐かしい呼び名もある。
これらの分類がじつは大分類でしかなく、細かく見ていけばいろいろな違いがはっきりしてくる。
どうだろうか。
ひと口にラーメンというが、いちいち分類していったら、それこそ手がつけられないほどである。
しかも、いま挙げたいろいろな分類のなかで、特別な調理技術が必要になるとすれば、本格的中国料理としての麺類だけである。
多少の特訓は必要になるとはいえ、ほとんど全部の商品を、素人がつくることは可能なのである。
たかがラーメンと思っている人もいるだろうが、これほどオリジナリティーの工夫の可能性に満ちたメニューは、ラーメンのほかにはないのである。
もう一度いうが、そのまま、成功しやすいというこの業種ならではのメリットでもある。
もちろん、ラーメン店の開業希望を持つに至った動機や理由は人それぞれだろう。
ラーメンが好きで、好きでたまらないという人なら、いま説明したくらいのことはとっくに勉強済みかもしれない。
また、ラーメンはこんなに奥が深いのかと驚いた人もいるだろう。
その差がそのまま成功できるかどうかという分かれ目になる、というわけではない。
取掛りとしては「ラーメン店くらいなら自分でも簡単にできるだろう」といった、軽いノリでもいっこうにさしつかえない。
大事なのは、これからラーメン店経営というビジネスについてどれだけ理解し、この仕事にどれだけ愛情を持てるか、ということなのだ。
私は、ラーメン店は素人でも成功できるといっている。
だれもが取り組めるということと、だれもが成功できるということは、実は同じではない。
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